
2.一線上のこそあど言葉
①「これ」の展開方法
②「それ」の展開方法
③「あれ」の展開方法
④「どれ」の展開方法
3.話者間の「こそあど」言葉
キム:ところで、先生がこれから話そうとする話は全体で何課あるんですか。
佐藤:だいたい10課くらいね。だけど、その内容を1課から順番に教えていかなければならないというわけでないの。
日本語教師が私の話す10課までの内容を十分に理解した上で、あくまで『みんなの日本語』をメインに教えてほしいの。私の話すことは、余った時間に少しずつ教えればいいのよ。それだけで、学生は頭の中が大分整理がつくと思うわ。体系的、概念的な内容だから。具体的な例は、また次の機会に話します。
キム:わかりました。
佐藤:そして、今回は、『これ、それ、あれ、どれ」など、指示代名詞の教え方について取り上げます。
指示代名詞の「こそあど言葉」は、『みんなの日本語』では第2課で扱うわね。
中国語やベトナム語では、指示代詞「それ」、つまり「中称」がないか、あるいはあいまいなの。そのせいか、学習者の中には、中級になっても「これ」、「それ」、「あれ」の使い分けが混乱している人が結構います。だから、なるべく早く扱って、確実に覚えたほうがいいわね。
ナレーション:第3課 「これ・それ・あれ・どれ」の教え方
『こそあど』には、一線上の『こそあど』と話者間の『こそあど』がありますが、指導する場合、簡単な「一線上のこそあど言葉」から行います。
1.教材の配置
教師は、あらかじめホワイトボードには、緑色の丸で囲った中にバスの絵カードを貼り付けておきます。
また、脇に4つの文型表も掲示しておきます。また、教室の後方には、ひらがな文字で書いた「あ」の字も貼り付けて置きます。
2.一線上のこそあど言葉
「一線上のこそあど言葉」とは、話者が同じ位置に立って、「これ」、「それ」、「あれ」の領域にある事物を指す場合です。「これ」、「それ」、「あれ」の指示代名詞は、距離によって決まります。
①「これ」の展開方法
まずはじめに、教師は、前列に座る学習者を一人選び、学習者の机の前に立ちます。そして、机の上を見ます。
せんせい:リーさん、これは なんですか?
リー:「えんぴつ」です。
せんせい:はい、そうです。これは「えんぴつ」です。
この時点では、まだ、学習者に『これ、それ、あれ、どれ』という指示代名詞を教えていませんので、学習者は「これ」を使いません。
教師は、「これは」と発音するときに、指を鉛筆に近づけます。
せんせい:では、もうちど、しつもん。
リーさん、これは 「けしごむ」ですか?
リー:はい、そうです。「けしごむ」です。
せんせい:これは 「けしごむ」です。
せんせい:では、もうちど、しつもん。これは「けしごむ」ですか。
リー:はい、そうです。これは「けしごむ」です。
教師は、同様の手順で、学習者の机を巡回し、4つの文型を織り交ぜながら、「これ」の定着を図ります。
②「それ」の展開方法
教師は学習者の近くに立ちます。そして、ホワイトボードの絵カードを指さし、「それ」を強調しがら発声します。
せんせい:リーさん、それは、ばすです。
では、しつもん。それは ぶたですか。こたえ、いっしょに。
リー:いいえ、それは 「ぶた」では ありません。
せんせい:では、それは なんですか。
リー:それは 「ばす」です。
せんせい:はい、そうです。それは 「ばす」です。
このあと、教師は同様の手順で、前列の学習者の机を巡回し、4つの文型を織り交ぜながら、「それ」の定着を図ります。
③「あれ」の展開方法
教師は、学習者から遠い、教室後方の「あ」を指さししながら、発声します。教師は「あれ」の発声の時、力いっぱい山なりに腕を伸ばして指を差します。
せんせい:では、あれは 「お」 ですか。
リー:いいえ、あれは 「お」 では ありません。
せんせい:では、あれは 「あ」ですか。
リー:はい、そうです。あれは 「あ」です。
教師は、同様の手順で、学習者の机を巡回し、4つの文型を織り交ぜながら、「あれ」の定着を図ります。
④「どれ」の展開方法
「どれ」の指導の時、名詞文の転換文の理解が必要になります。図のような資料を用意し、説明します。
また、「どれ」に対する答えのヒントとして、「これ」「それ」「あれ」のところに目をやった後、答のところに目を落としますと良いでしょう。
せんせい:では、「えんぴつ」はどれですか。
リー:「えんぴつ」は、これです。
せんせい:では、「バス」はどれですか。
リー:「バス」は、それです。
せんせい:はい、そうです。では、「あ」は どれですか。
リー:「あ」は あれです。
このあと、学習者全員に図のような教材を用意して、絵カードを貼り付け、4つの文型を織り交ぜながら、4つの文型の発話練習をするのも良いでしょう。
3.話者間の「こそあど」言葉
話者間の「こそあど」言葉とは、話し手に近い対象を指すときは「これ」、聞き手に近い対象を指すときは「それ」、話し手からも聞き手からも離れた遠い対象を指すときは「あれ」になります。
教師は、リーさんの席から2、3メートル離れた位置に立ち、リーさんの机にある鉛筆を指差しながら発話します。
せんせい:リーさん、それは 「バス」ですか。
リー:いいえ、これは 「バス」では ありません。
せんせい:それでは、それは なんですか?
リー:これは 「えんぴつ」です。
せんせい:はい、そうです。それは 「えんぴつ」です。
では、リーさん、これは 「みかん」ですか。
リー:いいえ、それは 「みかん」ではありません。
せんせい:では、これは なんですか。
リー:それは「りんご」です。
せんせい:はい、そうです。これは、「りんご」です。
では、「あ」は どれですか。
がくせい:「あ」は あれです。
せんせい:はい、そうです。「あ」は 「あれ」です。


