2.上告棄却の背景
3.累進課税と租税回避
4.事件の影響
5.投資家の課題
1.集団訴訟事件反省会
木村:先日、ZOOMによる弁護士団主催の集団訴訟事件反省会があり、参加しました。
佐藤:どうでしたか。
木村:まあ、勝訴すれば、飲み会でもやりましょうかとか、明るい雰囲気になったと思います。しかし、結果が敗訴でしたので、ちょっと重苦しい雰囲気でした。発言を求められても、何か恨み言になるようで、言い様がなく黙っていました。
とくに、家族3人が被害に遭ったという女性からの証言がありました。「3000万円詐取されて、病床のおじいちゃんにはまだ敗訴のことを、可哀想で告げられずにいる」などと
いかにも無念そうに話されて、一同しばらく絶句しました。改めて今回の事件の深刻さを感じましたね。
佐藤:弁護士の方々は何を話されていましたか。
木村:敗訴になったわけですから、責められても仕方がない立場でして、言葉も少なげでした。しかし、そのとき私が感じた印象は、今後は弁護士の仕事も大変になるなということです。
佐藤:具体的には、どういうことですか。
木村:今回の事件のように資金の大部分が海外の別会社に流出した後で、もう物理的にも回収が困難になります。もともと、アーツ証券の社長達は集金した巨額なお金をロンダリングするために、国をまたいでの壮大なスキームを構築したわけです。だから、弁護士の先生方が、いくら国内法の枠組みで法律論を並べても、とても相手の悪事を法律の網で掬い取れない。反省会で、誰かが言ってましたが、犯罪がIT情報化、グローバル化した今、もう従来型の弁護士では、扱えないのではないか。まあ、弁護士の先生方は、諦めるなとは言ってましたが。
2.上告棄却の背景
佐藤:今回、このような結果になった理由は何ですか。
木村:破綻の後、2016年~17年にかけて3回行われた財産状況報告集会に参加して驚いたことがありました。
つまり、224億円とも言われる被害額のうち、使途が明らかになったのが、全体の1割程度にすぎなかったということです。
こうした事実を、果たして政府がどう見ているのでしょうか。あるいは、使途が明白になった、1割程度のお金は捨て置き、残り9割、つまり200億円のお金を政府側がいかに回収するのか。IT情報化、グローバル化された犯罪への対応が今後の政府にとっての喫緊の課題であり、それには、多少国内法の適用を緩めても仕方ないと考え、今回の判決になったのではないかと思います。
今回の集団訴訟の判決内容、すなわち海外への資金移動を分別管理義務違反とすると、大企業・富裕層にとってはなはだ都合が悪いことになります。そこで、政府や司法も「上告棄却」という形にしたのではないかと推測されます。
3.累進課税と租税回避
木村:キムさん、累進課税と言う言葉を知っていますか。
キム:はい。累進課税制度とは、お金をたくさん稼ぐ人ほど税率が高くなり、所得に対して支払う税金の割合が多くなっていく仕組みのことです。
木村:そうです。グラフにすると、こうなりますね。ただ、これも所得が1億円までの話なんですね。次のグラフを見てください。1億円を過ぎたあたりから、急に下降することがわかります。
リー:水色の部分は何ですか。
木村:水色部分は本来なら徴収できるはずお金を表しています。これを見ると、明らかに政府が企業や金持ちを税制面で優遇していることがわかります。水色部分が回収されれば、当然、消費税など必要なくなります。
キム:なんでこうなるのですか。
木村:これは「租税回避」と関係します。
これは、2016年5月25日付朝日新聞の記事です。内容は、「世界有数のタックスヘイブン、つまり租税回避地として知られるイギリス領ケイマン諸島への日本からの証券投資が増え続けています。このグラフを見ると年々増え続けていることがわかります。ケイマン諸島への投信は、ケイマン政府から課税されません。また、日本の税制では、証券を対象とする投信は、その配当に対して課税するしくみです。したがって、投資家が配当を受けずにケイマンに蓄財すれば、課税を逃れることができます。
このように日本では、大企業・富裕層に対しては、税をまけてやり、さらに海外で税逃れと、二重の税逃れを許しているわけです。
4.事件の影響
佐藤:それでは、とりあえず今後投資家はどうしたらいいのでしょうか。
木村:反省会でもでは今後どう動けば良いのかという話も出ましたが、これといった具体案が出ませんでしたね。
今後私たち被害者がどう動くか考えたとき、YouTubeとか本を書くとか言っても、効果があまり期待できないですし。何か手詰まりです。
キム;いつも思うんですが、今回もマスコミは、沈黙していますよね。
佐藤:何しろ報道の自由度ランキングでは、2022年、日本は71位ですから。韓国とか台湾にも負けていますし。
木村:ですから、結果的に大衆は「情報」を知らされず、したがっていつまでも「賢くならない」。
佐藤:それが上の人たちには甚だ都合がいいわけですよね。
木村:そうですね。ですから、同様の事件は今後も増え続けるでしょうね。商品は「レセプト債」から新手の商品に形や名称を変えて。しかも、今回の事件で「販売元」の証券会社とかSPC、会計事務所は一切お咎めなしということは、「お墨付き」になりましたから。
しかし、投資者保護基金が損失を出した投資者に対して、1000万円まで補償するかどうかは、保護基金が恣意的に決めてもいいという今回の司法判断は、けっしてうやむやにしてほしくない話ですね。
5.投資家の課題
佐藤:しかし、今回のような巨大詐欺事件の影には、いつも救済されない被害者の存在がることを忘れてはいけないと思います。
木村:私も痛感しました。
佐藤:200億円とかの被害額は私たち庶民からすると見当つきません。しかし、もともとは被害者たちが日々の苦しい労働から得られたお金なのです。まさに命の水、血、涙でもあるわけですし。
木村:だから、安易に「自分には関係ないから」、「自己責任だから」、「金持ちの被害だからいい気味」などとタカをくくって見てはいけませんね。被害者にならない為に、常に当事者意識を忘れず、投資について勉強を続けることが大切だと思います。
佐藤:リーさんも、キムさんも「自分が被害者にならないためにはどうしたらよいのか」考えてきてください。これは宿題ですよ。
キム・リー:はーい。


