
2.今回の判決の今後への影響
3.被害額の実態
4.債権者集会
5.被害者の様子
1.最高裁ではまさかの棄却判決
佐藤:前回は、原告側が二審の判決結果を不服として、最高裁判所に上告したところまで伺いました。
木村:そうですね。しかし、2023年、つまり昨年の10月18日、結果は、まさかの上告棄却でした。最高裁は我々の訴えを退けた訳です。
佐藤:2015年10月に破綻が発覚したわけですから、あれから9年間、ずいぶんと時間がかかりましたね。
木村:被害者の方には、もちろん高齢の方もいます。もう少し早く結論が出なかったのかなと思います。最高裁判決は、通常であれば、受理しない場合数ヵ月で返ってくる所を、1年もかけての返事でした。最高裁側もかなり判断をまよったのではないかと思います。
しかし、最高裁の判決なので、もうこれ以上の訴えは不可能になりました。残念です。
2.今回の判決の今後への影響
佐藤:今回の裁判結果を一言で言うとどうなりますか。
木村:今回の判決で、重要なポイントは二つあります。一つは、損失を出した投資家を補償するかどうかは、投資者保護基金自身が判断すること、二つ目は投資家から集金したお金を海外の関連会社に移せば、それで分別管理の義務を果たしたことになるという2点です。
キム:投資家にとっては、今回の裁判内容が証券会社の倒産とか、万が一の時自分のお金が保護されるのかという、とても重要な判決だったと思うんです。しかし、私たちは今回の裁判のあったことを全く知りませんでした。
木村:そうですね。事実を世間に知らせるはずのマスコミが、一切報道しませんでしたからね。
佐藤:しかし、一方で、内閣府は、令和4年6月7日、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を閣議決定し、個人金融資産を全世代的に「貯蓄」から「投資」にシフトさせていく方向を打ち出しましたね。
リー:テレビでも盛んに、NISAとか宣伝してますから。わたしも、親に言われて始めました。
木村:そうですね。NISAの導入で、多くの人の目が投資に向けるようになりました。
ですから、なおさら私たちのような被害者を出さないためにも、もっとこうした事実を世間に広く知らせるべきではないかと思います。
3.被害額の実態
佐藤先生:それでは、今回の集団訴訟のまとめという意味で、順番にいろいろお聞きしたいと思います。まず、今回の原告側の被害額のあらましをお聞かせください。
木村:分かりました。2016年9月に破産管財人からの報告書が出ました。
リー:破産管財人ってだれですか。
ナレーター:破産管財人とは、破産者が保有している財産を管理・処分する権利を持つ人のことです。 裁判所が破産管財人を選任します。破産管財人には、当事者と利害関係のない弁護士が選ばれるのが一般的です。破産管財人の最も基本的な業務は、破産した方の財産を1円でも多くお金に換えて、債権者に対して公平な配当を実施することです。
4.債権者集会
木村:債権者集会は、2016年から2018年にかけて7回行われて、その間管財人たちが会社にいくら残っているのか調べあげ、報告されました。
管財人のまとめによりますと被害者は全体で2425名、被害額は227億100万円でした。残ったお金は20億に満たないものでした。そのお金をみんなで分配したわけです。
わたしの場合、契約してから破綻するまでの2年間は、年4回、約3%の配当利息も、ありました。この利息と今回の分配金を合計すると、戻ってきたお金は、全体の約20%でした。
リー:他の200億近いお金の行方はわからなかったのですか。
木村:そうですね。資料を見ますと、ベトナム投資信託とか米国の土地購入とか、訳のわかない目的で遣われていました。しかし、大部分のお金が追跡不可能でした。パナマ文書に「アーツ証券」の名前が載るくらいですから、要するにマネーロンダリングされて大部分は溶けてしまったわけです。
5.被害者の様子
佐藤:被害者の様子をお聞かせください。
木村:手元にはアーツ証券関係の被害者の会の名簿があります。これを見ますと、被害額がわかります。中には、家族3人で1億400万円支払った人もいます。金額の多い人では、一人で1億6000万という人がいます。
佐藤:今回、レセプト債を売った証券会社はアーツ証券だけですか。
木村:いえ、 被害者数が一番多かったのがアーツ証券でしたが、他に田原証券、竹松証券など、北海道から沖縄までの証券会社8社が販売していました。
被害者の中には「東京の病院が全部潰れない限り大丈夫」、「年利4%近い配当が得られる」などとFPから説明を受けたと話す人もいました。
また、被害者の多くが、年金生活の老人であり、年金だけでは生活が不安なので貯金を切り崩して債権レセプト債を購入した人もいました。事件の後、歩行が不自由になったり、弁護士の着手金の支払えない程生活が困窮した人もいました。
佐藤:ほかの被害者の会はどんな状態でしたか。
木村:ほかの被害者達は、FPを訴えて直接賠償させたり、アーツ証券の社長個人を訴えて賠償させたり、証券会社によっては全額補償した事例もありました。
しかし、我々アーツ証券のグループだけは一番人数や、被害額も大きかったのですが、
結局取り戻すことはできませんでした。それが一番残念というか割り切れない物を感じますね。


